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3003 ヒューリック
「3Kビジネス」に注力
連結純利益上振れ
ヒューリックは昨年、旅館事業に参入した。土地の目利き力を生かして、まず10ヵ所の開発を目指す。富裕層向けの新しい旅館の計画もある。同社の西浦社長は『観光、高齢者、環境の「3K」ビジネスに注力する』と独自の戦略を強調する。2015年12月期の連結純利益は、前の期に比べ35%増の300億円前後になったもよう。過去最高を見込んでいた従来予想を10億円上回る。オフィスの取得が想定より進み、賃貸面積が増えたのに加え、空室率も低く抑えられ、賃料収入が拡大した。純利益ベースでは東急不動産ホールディングスを抜いて不動産業界で5位になる見込みだ。売上高は25%減の1600億円前後と、従来予想並みになったとみられる。
不動産投資信託(REIT)市況の低迷を受けて、傘下のREITの資金調達が滞り、ヒューリックが予定していた不動産の売却ができなかった。ただ、ヒューリック虎の門ビル(港区)が昨年6月に開業するなどオフィスの取得が想定を上回るペースで進み、賃貸面積は15%以上増えた。保有不動産の空室率は1%前後と、1年を通してほぼ満室状態だった。東急不動産HDの今期純利益見込み(前期比5%増の265億円)を上回っており、このまま着地すれば不動産業界で野村不動産ホールディングスに次ぐ利益水準になる。
16年12月期は昨年11月に買収したシンプレクス・インベストメント・アドバイザーズが保有する13物件の賃料が収益に寄与するほか、ホテルなどオフィス以外の不動産も強化する。ヒューリックは中期経営計画の純利益目標(250億円)を1年前倒しで達成するため、18年12月期を最終年度とする新たな中計を発表。3年間で経常利益を前期見込み比50%増の600億円強に引き上げる内容だ。
4528 小野薬品工業
がん免疫薬が業績を牽引
前期純利益は43%増
小野薬品工業の業績が急拡大する。牽引役は昨年12月に肺がん治療薬として承認されたがん免疫薬「オプジーボ」だ。小野薬品は2016年3月期(国際会計基準)の連続純利益が前期比43%増の186億円になる見通しと発表。従来予想(1%増の131億円)を大幅に引き上げた。通期の純利益予想の上方修正は今期に入って2回目になる。16年3月期の売上高は前期比15%増の1560億円と従来予想(6%増の1445億円)を上回る見通しだ。
「オプジーボ」は、当初悪性黒色腫(メラノーマ)の治療薬として約55億円の売り上げを見込んでいた。しかし、肺がん患者の85%を占める「非小細胞肺がん」治療に使えるようになったため、予想額を積み増して175億円を見込む。営業利益は62%増の240億円(従来予想は6%増の152億円)の見通し。臨床試験(治験)に使う薬剤経費の一部が17年3月期にずれ込み、この結果、研究開発費が10億円程度減る。15年4〜12月期の連結純利益は、前年同期比22%増の191億円。売上高は5%増の1124億円で、営業利益は36%増の223億円だった。
ちなみに、小野薬品はがん細胞を直接攻撃せず、異物を排除する免疫細胞の働きを強める新しいがん治療薬「オプジーボ」の営業を強化する。自社で30人だったがん領域のMR(医薬情報担当者)を、このほど180人に増員し米製薬大手と合計したMRは300人強と従来の約6倍に増えた。全国に約1000ある主要な大型病院への営業を本格化する。「オプジーボ」はその働き方の特性から副作用が少ないとされる。2014年に悪性黒色腫(メラノーマ)治療として発売し、昨年12月に肺がん治療薬として承認された。15年3月期の「オプジーボ」の売上高は25億円。将来は1000億円以上に伸びるとみている。小野薬品全体では1000人弱のMRがおり、がん領域はこの2割近くを占める。共同開発先の米プリストル・マイヤーズスクイブも増員し、収益の最大化を狙う。小野薬品は16年3月期の連結売上高(国際会計基準)を前期比6%増の1445億円を見込んでいる。
7203 トヨタ自動車
4〜12月期営業益2.3兆円
ダイハツ完全子会社化・小型車事業の中核に
トヨタ自動車は51.2%出資するダイハツ工業を8月1日付で完全子会社にすると正式発表した。両社の技術・ノウハウや事業基盤を融合し、新興国を中心に成長が見込まれる小型市場分野を軸に一体的なクルマづくりを進める。年間販売台数が1千万台を超えたトヨタグループの持続的な成長につなげる。トヨタ自動車の2015年4〜12月期決算(米国会計基準)は、純利益が前年同期比9%増の1兆8860億円だった。ガソリン安で北米での大型車販売が伸び、4〜12月期として過去最高を更新した。通期は前期比4%増の2兆2700億円の見通しで、従来予想を200億円増やした。4〜12月の売上高は7%増の21兆4313億円だった。日本で軽自動車増税の影響が出たほか、新興国の消費低迷が響き、グループの総販売台数は763万2000台と前年同期並みにとどまった。ただ、「レクサス」など高級車が米国で伸び、円安・ドル高も収益を押し上げた。
15年12月期だけでみると営業利益は前年同期比5%減った。四半期ベースでの減益は14年1〜3月期以来だ。タイやロシアなど新興国で販売が落ち込んだ。北米での好調を支えに、16年3月期通期の総販売台数は1005万台(前期比1%減)と従来予想より5万台増える見通しだ。売上高は1%増の27兆5000億円。中国のグループ会社の利益が膨らむと想定、その分を純利益予想に上積みした。愛知車両の爆発事故で部品供給が滞り、8日から18日まで車両工場の稼働を停止したが業績面の影響は軽微という。
空前の好業績を続けてきたトヨタ自動車だが、足元では天井にぶつかっている。16年3月期通期については、売上高、営業利益とも従来の予想を据え置き純利益だけ200億円多い2兆2700億円に上方修正した。世界首位を走る販売台数も、景気が低迷するタイなど新興国での不振により、前年度より約12万台少ない105万台と見込む。直近の10〜12月期だけを見ると、営業利益は前年同期比5.3%減。円安にブレーキがかかり、「(利益を押し上げる)為替の影響がほとんど出てこなかった」(会社側)という。
新型プリウスから始めた車の設計を土台から見直す取り組みもコスト増の要因となった。企業の市場価値を示す株式の時価総額は、米国のIT企業などと比べ、利益の大きさのわりには順位が低い。トヨタはリーマン・ショック後に生産能力がだぶついて大赤字になった反動で、新工場の建設を手控えた結果、売れ筋の車を増産する余力が乏しいのが原状だ。新興国市場をテコ入れするため、ダイハツ工業の完全子会社化なども打ち出したが、効果が表れるのはまだ先。快進撃を続けてきたトヨタ自動車の経営環境は転機を迎えつつある。
※上記の原稿は一部、日経新聞より転載・引用をしています。
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